「保育の2025年問題」知っていますか?知っていると知らないとでは大違い…これからの保育園の行き先を解説します!
2024.04.23更新
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「保育の2025年問題」は全ての保育士に関係があります。
保育の2025年問題というのをご存じでしょうか?
保育の2025年問題とは?
保育所の利用率が2025年にピークを迎え、そこからはゆるやかに子どもが減り、保育所の利用率が下がっていく問題です。
- 2025年問題による保育園への影響
- ・働いている保育園が閉園する可能性が出てくる。
・給料やボーナスが減る。
・転職がしにくくなる。
現在、保育士として働いている人、これから保育士になりたい人、全ての人に関わる問題です。
ぜひ、知識として知っておきましょう。
この記事を読むとわかること
・「保育の2025年問題」の内容
・「保育の2025年問題」が私たちに及ぼす影響。
・「保育の2025年問題」にどのように対応するか。
2025年問題とは?
厚生労働省は2021年5月「保育を取り巻く状況について」という調査を発表しました。
その中で「保育園は利用定員は2025年にピークを迎える」という推測を出しました。
下の表が根拠となっている資料です。
緑色の棒グラフが保育所における利用児童数になっています。
右肩あがりですが、R7年以降は横ばいですね。
現在は待機児童問題が話題となり、保育所の数もどんどん増やしてきました。
2025年以降は保育園の定員よりも子どもの数が少ない、いわゆる定員割れを起こす保育園が続出します。
それが保育の2025年問題というわけです。
なぜ2025年問題は起こるのか?
保育の2025年はなぜ起こるのでしょう?
それは純粋に出生率が低下しているからです。
さきほどの図をもう一度見てみます。
この図表の赤色の線は国立社会保障人口問題研究所が算出した子どもの出生数です。
右肩下がりですね…。
未来の出生数はあくまで推測です。「このままいくとこうなるよ」という事ですね。
先ほども触れましたが、国は待機児童問題の解決に尽力してきました。
それにより、この10年間で全国の保育施設は1万5千以上も増えました。
取り組みの成果で、地域差はあるものの、かなり待機児童数は減ってきました。
その結果、今度はたくさん作った保育所をどう維持・調整していくのか?という新たな課題が生まれてしまったのです。
一難去ってまた一難ですね…。
保育の2025年はすぐ起きる?答えはNoです。
利用児童数がピークを迎えるのが2025年ということはわかりました。
では、2025年にすぐ大きな問題が起きるのでしょうか?その回答はNoです。
先ほどのグラフをもう1度見てみましょう。
緑色棒グラフが利用定員数でした。
2025年、つまりR7年以降減少してはいません。
ほんとだ!なんでですか??
これは女性の就業率と関係してきます。
先ほどのグラフの青い線が女性の就業率です。
この表を見ていると、女性の就業率は増加傾向にあります。
つまり働いている女性が増えているから、子どもを預ける人も増えるということになります。
そのことから、2025年にすぐに保育園で定員割れ(子どもの人数が埋まらない)が起きることはありません。
しかし、出生数が低下している以上、必ず定員割れをしてくる保育園が出てきます。
2025年問題はなにが問題なの?
2025年問題により、利用児童数が減り、定員割れする保育園が続出することがわかりました。
では、それによって私たちにはどう影響してくるのでしょう?
①保育園の運営費が下がり、給与や賞与に影響が出る可能性がある。
保育園は「公定価格」という財政支援のもと運営ができています。
国から「公定価格」に基づいた委託費が支給され、給料や物品購入をおこなます。
「公定価格」は基本的には子どもの人数で支給されます。
例えば、このような試算が公表されています。
利用定員160名
①定員どおり(160名)が利用している場合…公定価格による委託費 14,116万円/年
②定員ー10名(150名)が利用している場合…公定価格による委託費 14,991万円/年
※委託費というのは、保育園が国から委託されて運営しているので、運営にかかるお金のことを指します。
年間で800万円ほど差が出てますね。
160人定員は保育園の中では一般的な部類です。
次はこちらをご覧ください。
利用定員50名
①定員どおり(50名)…委託費(運営費)7,171万円/年
②定員ー10名(40名)…委託費(運営費)5,958万円/年
(出典:全国私立保育園連盟『人口減少社会の保育を議論する3つの視点』より)
こちらは1200万円以上違う!?
同じ人数であるのにも関わらず、400万円もの差が開いてしまいます。
これは、乳児が3人以上いないともらえない加算があったり、事務職員を雇い入れる加算がついたり…複雑な計算式があります。
人数によって仕事が増えるだろうから、その分の人件費、という名目になっています。
このように、保育園の公定価格は非常に複雑な計算で成り立っています。
長くなってしまいましたが、つまり子どもの利用数が減り、定員割れの状態になると運営費も少なくなります。
今の制度ですと、利用定員が50名以下になると、補助金額が急激に下がり始める設計になっています。
そうなった場合に、給与の見直しや賞与が下がる可能性がでてきます。
基本給は減らしにくいですが、賞与が低くなったりはあると思います。
②そもそも働いている保育園が閉園する可能性がある。
現在は待機児童問題もあり、定員は充足状態ですが、今後定員割れが続けば、保育園の運営自体ができなくなってくる保育園もあると思います。
すでに経営が困難となっている保育所も多数でてきています。
これは自治体の子どもの人数が減っている場合もあるので、必ずしも運営に問題があるとは限りません。
しかし、経営が困難になる可能性のある保育園で務めている方は、ずっとその保育園で働くべきなのか、見極めが必要になってきます。
③転職が難しくなる。
保育園の運営が厳しくなる、そもそも数自体が減ってくる、ということは当然転職も難しくなってきます。
現在は引く手あまたの保育士ですので、資格を持っていれば、どこかしらには転職できます。
しかし、今後は保育園側が保育士を選ぶ時代がやってくるかもしれません。
2025年問題にむけて、どう心構えしたらいい?
ここまで2025年問題について解説してきました。
問題はわかったけど…どうすればいいですか?
そんな声も聞こえてきます。
ここからは2025年問題についてどのように心構えしていけばよいのか?をお話します。
選ばれる保育園を目指す。
現在の保育園が好き、ずっと働きたい、と考えている方はこの方法を取ることになります。
保育の2025年問題も、利用定員数が減るだけであり、子どもの人数は一定数います。
つまり、運営費を減らさなければ、運営を継続することができます。(当たり前ですが)
その為には、保護者に選ばれる保育園であることが大切になってきます。
これは運営者だけの問題ではなく、職員一人ひとりが考える問題です。
なぜなら、保護者に選ばれる保育園は当然、質の高い保育をおこなっている保育園だからです。
保育の質をあげるのは運営者だけの力だけでは成り立ちません。
選ばれる保育園って難しいですよね…。
英語教室・体操教室・絵画教室…安直なサービスではなく、専門性の高い保育園に頑張ってほしいです。
保育内容だけではなく、保護者支援は今の保護者に適切なものになっているか?職員は働きやすい保育園なのか?など質をあげるポイントはたくさんあります。
保育の2025年問題をきっかけに、保育園のことを話し合ってみるのも良いと思います。
保育園の質を上げる記事はこちらでも書いてます。
自分のキャリアをあげる。
どんなに頑張ったとしても、自分の働いている保育園が閉園されてしまう、個人の事情で転職をする、などのケースが出てきます。
その際に必要なのが自分が保育園に選ばれる保育士であるということです。
- 保育士のスキルアップ方法3選
- キャリアアップ研修を受ける。
保育ファシリテーション、絵本専門誌などスキルのあがる資格を勉強する。
強味や弱味などを活かしながら保育をし、自分の強味をみつける。
これらのように、資格を持っていたり、強味をもっていると転職の際に有利になります。
特にキャリアアップ研修は取得に時間がかかるので、持っているだけでかなり有利です。
2025年まではまだまだ時間があります。
これからの時代に向けて、いかに自分を磨くことができるかにかかっています。
自分を磨く方法として最もコスパが良いのは読書と言われています。
オススメの書籍についてはコチラの記事をご覧ください。
転職活動をする
有効求人倍率ってなんですか?
有効求人倍率とは
求職者一人当たりにどのくらい仕事があるかを示す経済指標のことです。
例えば50人求職者がいて、仕事の求人が50件あれば有効求人倍率は1倍です。
これが100件になると、有効求人倍率は2倍となります。
逆に25件になると、有効求人倍率は0.5倍となります。
昔は1人の求人に5~6人求職者が集まる時代もありました。
今の保育園に少なからず、不安がある方は転職活動をはじめることをオススメします。
質の良い保育園ほど、すぐに求人が埋まってしまいます。
すぐに転職しないにしても、自分で保育園を探したり、転職エージェントに登録するだけでも、いざという時にすぐに転職できます。
保育士転職についてはこちらの記事をご覧ください。
https://hoikubu.blog/kobitoencho/44/問題について関心を持つ
2025年問題はあくまで統計の試算であって、必ずしも確定しているわけではありません。
国もこの問題をどのように解決したらよいか、必死で考えています。
地域における保育所・保育者等のあり方検討会という会議の中で話し合われています。
地域における保育所・保育者等の在り方検討会について詳しく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
大切なのは、現在の状況を正しく認識し、自分がどう向き合うかを考えることです。
保育の質を高めるもよし、資格の勉強をするもよし、今から潰れなさそうな保育園に転職するのもよし…。
まだ時間はあります。やれることを整理し、しっかり取り組んでいきましょう!
まとめ
少子化の影響で保育園の利用定員数が2025年にピークを迎え、そこからは定員割れし、運営継続ができない保育園が増える問題。
- 給与・賞与に影響が出る可能性がある。(定員割れすると運営費が減るため)
- 働いている保育園が閉園する可能性がある。
- 転職が難しくなる。
- 選ばれる保育園を作る。
- 自分のキャリアをあげる(キャリアアップ研修の受講、保育ファシリテーションなど資格の取得など)
- 保育業界のニュースに注目し、現場の声をあげていく。
以上となります。
日々、保育で疲れていると、保育業界の情報や世間の情報をなかなかキャッチできません。
しかし、業界の動きを把握していないと、思わぬところでつまづいてしまう可能性もあります。
保育士としての人生をより豊かにするために、様々な出来事に目を向けていきましょう。
ほいくぶでは保育や子育てに役立つ情報を発信していきます。
これからも一緒に勉強しましょう。
子育てに関わる全ての人にエールを!