『こども基本法』をわかりやすく解説!いつから?何が変わる?

『こども基本法』をわかりやすく解説!いつから?何が変わる?

2023年4月1日より「こども基本法」が施行されます。

2022年6月15日、国会で「こども基本法」が成立しました。

こども基本法は日本で初めてこどもの権利を包括的に明記した法律です。

まさに今後の子どもの未来において大きな分岐点となる法律です。

この記事では以下のことについて解説していきます。

  • 「こども基本法」がなぜできたのか?
  • 「こども基本法」とは一体どのような法律なのか?
  • 「こども基本法」ができることで何が変わるのか?

今回はこども基本法が成立した背景や法律の内容などをわかりやすく解説していきます。

こどもと関わる全ての人はぜひ知っておきたい記事です。

こびとちゃん
こびとちゃん

ぜひ最後までご覧ください!

なぜ「こども基本法」ができるの?

日本にはこどもの権利を認める法律がなかった。

まず大前提として、日本にはこれまでこどもの権利を包括的に認める法律はありませんでした。

例えば、障害者には障害者基本法、女性には男女共同参画社会基本法…などそれぞれ権利を尊重する法律が存在します。

こうした法律があることで、国や地方公共団体にちゃんと権利を守るよう責任が発生したり、権利が守られるようにしっかりと計画を立てられたり、様々な取り組みがおこなわれます。

日本財団『こども基本法Webサイト』

しかし、これまで、こどもにはそれがありませんでした。

こどもに関連する法律は、児童福祉法や教育基本法、成育基本法…など様々な種類のものがあります。

児童福祉法は福祉分野の法律、教育基本法は教育分野の法律、成育基本法は医療分野の法律…などそれぞれの分野の中での法律の位置づけとなっています。

こどもの権利を包括的に認める法律がなかったため、こどもへの政策が後回しになってしまったり、権利侵害が起こりやすい環境になってしまったりしているのが課題でした。

こども基本法を制定することにより、これらの課題の解決をはかっていきます。

こびと園長
こびと園長

基本法が制定されることにより、認知度が上がるケースもあるそうです。

こびとちゃん
こびとちゃん

こどもの権利を守るのが当たり前の社会になって欲しいですね!

ここからは、こども基本法が制定されることになった背景を解説していきます。

内容にすすみたい方はコチラ

こども基本法成立の背景

こども基本法をより理解するためには、成立した背景を知っておくことが大切です。

こども基本法が成立した背景は以下の4つがポイントとなっています。

  • 国際条約である「こどもの権利条約」を批准したこと。
  • 2016年改正の児童福祉法の中に「児童の権利」が初めて明記されたこと。
  • 新型コロナウイルス感染拡大によりこどもの権利が侵害された可能性があったこと。
  • 児童虐待やいじめ問題など、こどもに関する問題が増加したこと。

それぞれ見ていきましょう。

国際条約である「こどもの権利条約」を批准したこと。

こども基本法が成立したきっかけは「児童の権利に関する条約(以下、子どもの権利条約)」を日本が批准したからと言えます。

こどもの権利条約に批准した国はこどもの権利を守るような法整備や環境を整えなければなりません。

こどもの権利条約をきちんと国内で守るための法律が「こども基本法」なのです。

こびとちゃん
こびとちゃん

こどもの権利条約ってどんな内容なのですか?

児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)とは?
1989年子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様ひとりの人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。
前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定しています。(引用:ユニセフ『こどもの権利条約』より)

こどもの権利の大きな原則があります。それが以下の4つです。

こどもの権利条約4つの原則

・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)

・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)

・子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)

・差別の禁止(差別のないこと)

こどもの権利条約は54の条文で構成されています。

全て書くと膨大な量になってしまうので、割愛します。

こどもの権利条約について詳しく学びたい方はコチラの書籍が読みやすくてオススメです。

ちなみに日本が子どもの権利条約を批准したのは1994年、世界で158番目とかなり遅いです。ご存じでしたか?

こびとちゃん
こびとちゃん

30年前に批准したのに…なぜ今さら新しく法律を作るのですか?

こびと園長
こびと園長

「日本は十分こどもの権利は守られてるよ」というスタンスだったのです。

日本は国連に対し「こどもの権利に関する法律は現在あるもので十分守られている」というスタンスでした。

もともと「こどもは守るもの」という価値観が強かったり、人権意識についてはまだ低い風潮があったりします。

そこから国連から何度も勧告を受けたり、国内からの声も受けたりして、少しずつ変化してきました。

2016年の児童福祉法改正は大きな一歩となりました。

2016年改正の児童福祉法の中に「児童の権利」が初めて明記されたこと。

こどもの権利条約を批准したものの…そこから大きく動きはなかった日本。

2016年に児童福祉法が改正され、この中ではじめて「児童の権利」という言葉が明記されました。

こちらは、改正前と改正後の比較の表です。

【改正前】児童福祉法条文
第1条1すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努め
なければならない。
第1条2すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。
第2条国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成
する責任を負う
【改正後】児童福祉法条文
第1条1全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されると、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。
第2条全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。

改正前に比べて「こどもの権利条約」「意見表明権」について記載されています。

こびとちゃん
こびとちゃん

文章自体もガラリと変わっていますね!

こびと園長
こびと園長

この改正では児童福祉法の「理念」が明確化された改正だったのです。

この児童福祉法の改正は、こども基本法の成立に向けて大きな一歩となったのでした。

新型コロナウイルス感染拡大によりこどもの権利が侵害された可能性があったこと。

2020年に日本財団が「こども基本法」の制定を提言しました。

このことも「こども基本法」への制定に大きな影響を与えました。

こびとちゃん
こびとちゃん

なぜ日本財団がそんな提言をしたのですか?

こびと園長
こびと園長

新型コロナウイルスの影響によるものです。

2020年2月27日当時の安部晋三首相は全国一斉休校を要請しました。

休校期間は最長で約3か月にも及びました。

オンラインによる授業も現在ほど整備されておらず、その期間こどもが学ぶ機会を保障することも難しかったです。

また、何の法的根拠もないままに、公園での固定遊具が使用禁止になる、使用が制限されるなど、こどもへの学習や育ちへの影響の視点がないまま、取り組みがされてきました。

この事態に多くの関係者がこどもを守る法律がない現実を目の当たりにし、子どもを守る法律と行政機関の創設の必要性を意識するようになりました。

児童虐待に関する問題が増加したこと。

近年、子どもの虐待は増加しています。

2009年(平成21年)の44,211件と比べると2021年(令和3年)は4倍以上の207,659件の虐待相談数があがっています。

こびとちゃん
こびとちゃん

20万件以上あるのですね…。

こびと園長
こびと園長

潜在的なものが発見できるようになってきた部分もあると思います。

虐待を防ぐためには、家庭と行政、地域サービス、社会福祉など様々な連携が必要になってきます。

社会が一体となって、虐待を防ぐ仕組みを作っていかなければいけません。

そのためにはこどもの権利を法律上できちんと明記し、専門の省庁によって組織化され、効果的な施策をしていかなければなりません。

まさにこども基本法とこども家庭庁の設立は、このような経緯から必要とされてきたのです。

こども基本法の内容

ここからはこども基本法の内容について解説していきます。

こども基本法は二十条で形成されています。

大まかな流れはこのようになっています。

内容
第1条目的
第2条定義
第3条基本理念
第4~7条責務等
第8条年次報告
第9条こども大綱
第10条都道府県こども計画、市町村こども計画
第11条こどもの意見反映
第12条総合的かつ一体的な提供のための体制整備
第13~14条関係者相互の有機的な連携の確保等
第15条この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容についての周知
第16条こども施策の充実及び財政上の措置等
第17~20条こども政策推進会議
こびと園長
こびと園長

ポイントになる部分を解説していきます。

こびとちゃん
こびとちゃん

こども基本法マラソン…スタートです!

第1条目的

(目的)
第一条 この法律は、日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、社会全体としてこども施策に取り組むことができるよう、こども施策に関し、基本理念を定め、国の責務等を明らかにし、及びこども施策の基本となる事項を定めるとともに、こども政策推進会議を設置すること等により、こども施策を総合的に推進することを目的とする。

(引用:こども基本法案)
こびとちゃん
こびとちゃん

文章だと読みにくいですね…。

要約すると「全てのこどもが権利を守られながら、幸福な生活が送れるよう、基本的な考え方や国がやるべきことを明確にし、こども施策を推進していきますよ」ということです。

改めて「こどもの権利条約にのっとること」や「こどもの権利擁護をはかること」が法律として明記されています。

こびと園長
こびと園長

私たち大人は、法的にも「こどもの権利」に、ちゃんと向き合わなければいけないわけですね。

第2条「こども」の定義

第二条では「こども」や「こども施策」についての定義がされています。

(定義)
第二条 この法律において「こども」とは、心身の発達の過程にある者をいう。

2 この法律において「こども施策」とは、次に掲げる施策その他のこどもに関する施策及びこれと一体的に講ずべき施策をいう。
一 新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過程を通じて切れ目なく行われるこどもの健やかな成長に対する支援
二 子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資するため、就労、結婚、妊娠、出産、育児等の各段階に応じて行われる支援
三 家庭における養育環境その他のこどもの養育環境の整備

(引用:こども基本法案)

こどもの定義

こども基本法上のこどもは「18歳以上」ではありません。

心身の発達の過程にある者と定義されています。

こびと園長
こびと園長

18歳になったらおしまい!ではなく、切れ目のない支援ができるようになります。

「こどもに関する施策」と「一体的に講ずべき施策」とは?

こども基本法におけるこども施策は大まかに2つの施策に分けられることになります。

それが「こどもに関する施策」と「一体的に講ずべき施策」です。

「こどもに関する施策」については以下の3項目が当てはまります。

こどもに関する施策

①新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の各段階を経て、おとなになるまでの心身の発達の過程を通じて切れ目なく行われるこどもの健やかな成長に対する支援

②子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資するため、就労、結婚、妊娠、出産、育児等の各段階に応じて行われる支援

③家庭における養育環境その他のこどもの養育環境の整備

こどもが生まれ、育ち、親になり…生涯を健やかに過ごせるような支援のことを指します。

こびとちゃん
こびとちゃん

ダイレクトにこどもに関する部分の施策ですね!

「一体に講ずべき施策」とは以下のようなものが当てはまります。

一体的に講ずべき施策

・主たる目的はこどもの健やかな成長に対する支援等ではないが、こどもや子育て家庭に関係する施策。(例:国民全体の教育の振興、仕事と子育ての両立等の雇用環境の整備、小児医療を含む医療の確保・提供など)

・ 「こどもに関する施策」と連続性を持って行われるべき若者に係る施策。(例:若者の社会参画支援、就労支援、社会生活を営む上で困難を抱える若者支援など)

「一体的に講ずべき施策」とはダイレクトにこどもに関わるものではありませんが、教育・医療・雇用など間接的に関わる施策です。

こびと園長
こびと園長

こどもが健やかに育つには環境を整えることが大切ですからね。

第3条基本理念

(基本理念)
第三条 こども施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。
二 全てのこどもについて、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること。
三 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること。
四 全てのこどもについて、その年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。
五 こどもの養育については、家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、これらの者に対してこどもの養育に関し十分な支援を行うとともに、家庭での養育が困難なこどもにはできる限り家庭と同様の養育環境を確保することにより、こどもが心身ともに健やかに育成されるようにすること。
六 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

(引用:こども基本法案)

基本の理念についてです。このままだと少し読みにくいので、ポイントを整理します。

こども基本法理念ポイント6つ

① 個人として尊重され、その基本的人権が保障されるとともに、差別的取扱いを受けることがないようにすること。

②適切な養育、生活の保障、愛されながら保護されること、福祉に係る権利、教育を受ける権利が与えられること。

③発達の程度に応じて、全ての事項に関して意見表明する機会や社会活動に参画する機会が保障されること。

④ 年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること。

⑤こどもの養育は家庭での養育が基本として行われ、家庭での養育の困難なこどもにもできる限り家庭と同様の養育環境を用意すること。

⑥ 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境を整備すること。

①~④に関してはこどもの権利条約の基本原則が盛り込まれている所がポイントです。

こびとちゃん
こびとちゃん

これが全部叶ったら素敵ですね!

こびと園長
こびと園長

それが当たり前の社会にしなければいけませんね。

第4~7条責務等

(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、こども施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、こども施策に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内におけるこどもの状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業主の努力)
第六条 事業主は、基本理念にのっとり、その雇用する労働者の職業生活及び家庭生活の充実が図られるよう、必要な雇用環境の整備に努めるものとする。
(国民の努力)
第七条 国民は、基本理念にのっとり、こども施策について関心と理解を深めるとともに、国又は地方公共団体が実施するこども施策に協力するよう努めるものとする。

(引用:こども基本法案)

第4~7条は責務等が記載されています。

国から、地方公共団体、事業主、個人…と要するに「全ての人がこの法律を守らなければいけません」という事が記載されています。

第8条年次報告

第八条 政府は、毎年、国会に、我が国におけるこどもをめぐる状況及び政府が講じたこども施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。
2 前項の報告は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
一 少子化社会対策基本法(平成十五年法律第百三十三号)第九条第一項に規定する少子化の状況及び少子化に対処するために講じた施策の概況
二 子ども・若者育成支援推進法(平成二十一年法律第七十一号)第六条第一項に規定する我が国における子ども・若者の状況及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況
三 子どもの貧困対策の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十四号)第七条第一項に規定する子どもの貧困の状況及び子どもの貧困対策の実施の状況

(引用:こども基本法案)

第8条には国に年次報告の義務が課せられていることが記載されています。

少子化対策、こどもの貧困対策など…このように法律で報告を義務化することで取り組みを積極的におこなっていかなければならない根拠となります。

こびと園長
こびと園長

基本法が成立することの重要さはこのようなところにありますね。

第9条こども大綱

(こども施策に関する大綱)
第九条 政府は、こども施策を総合的に推進するため、こども施策に関する大綱(以下「こども大綱」という。)を定めなければならない。
2 こども大綱は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 こども施策に関する基本的な方針
二 こども施策に関する重要事項
三 前二号に掲げるもののほか、こども施策を推進するために必要な事項
3 こども大綱は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
一 少子化社会対策基本法第七条第一項に規定する総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策
二 子ども・若者育成支援推進法第八条第二項各号に掲げる事項
三 子どもの貧困対策の推進に関する法律第八条第二項各号に掲げる事項
4 こども大綱に定めるこども施策については、原則として、当該こども施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとする。
5 内閣総理大臣は、こども大綱の案につき閣議の決定を求めなければならない。
6・7 (略)

(引用:こども基本法案)

第9条はこども大綱について触れられています。

こびとちゃん
こびとちゃん

こども大綱ってなんですか?

こども大綱とは?
こども施策を総合的に推進するために、こども施策に関する基本 的な方針、重要事項を定めるものです。
(引用:こども基本法案より) 

日本ではこれまでに、こどもにまつわる施策として、以下の大綱を作成してきました。

  • 少子化社会対策大綱
  • 子ども・若者育成支援推進大綱
  • 子供の貧困対策に関する大綱

こども関連の諸問題をそれぞれバラバラに施策をしてきました。

しかし、これらの問題は社会の構造と複雑に絡んでおり、単体の問題を解決するのは困難です。

こどもにまつわる問題をちゃんと整理し、1つにまとめたものが「こども大綱」となります。

こびと園長
こびと園長

総合的に進めるべき問題ですし、事務負担も減るのです。

こども大綱は以下のスケジュールで作成されています。

こども基本法説明資料 – 内閣官房

順調に進めば、2023年中に国会に提出されるようです。

こども大綱は現在も作成がすすんでおり、それらの会議はホームページで公開されています。

こびと園長
こびと園長

こども大綱の検討は第6回目からおこなっています。

こびとちゃん
こびとちゃん

みんなが興味を持って大綱の完成を見守りたいですね✨

第10条都道府県こども計画、市町村こども計画

(都道府県こども計画等)
第十条 都道府県は、こども大綱を勘案して、当該都道府県におけるこども施策についての計画(以下この条において「都道府県こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
2 市町村は、こども大綱(都道府県こども計画が定められているときは、こども大綱及び都道府県こども計画)を勘案して、当該市町村におけるこども施策についての計画(以下この条において「市町村こども計画」という。)を定めるよう努めるものとする。
3 都道府県又は市町村は、都道府県こども計画又は市町村こども計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
4 都道府県こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第九条第一項に規定する都道府県子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第九条第一項に規定する都道府県計画その他法令の規定により都道府県が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。
5 市町村こども計画は、子ども・若者育成支援推進法第九条第二項に規定する市町村子ども・若者計画、子どもの貧困対策の推進に関する法律第九条第二項に規定する市町村計画その他法令の規定により市町村が作成する計画であってこども施策に関する事項を定めるものと一体のものとして作成することができる。

(引用:こども基本法案)

第10条は、こども大綱に沿って都道府県や市区町村はこども施策について計画するように、という旨の文章が記載されています。

ここでの注意点はあくまで「努めるものとする」ということなので、努力義務ということです。

こども大綱ができてから、少しずつ施策に反映されていくことでしょう。

第11条こどもの意見反映

(こども施策に対するこども等の意見の反映)
第十一条 国及び地方公共団体は、こども施策を策定し、実施し、及び評価するに当たっては、当該こども施策の対象となるこども又はこどもを養育する者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

(引用:こども基本法案)

11条ではこどもの意見反映について記載がありました。

ここで言う「国」は行政だけではなく、司法や立法も含まれているそうです。

こどもに関わる施策を取り扱う際は「こどもの視点」を考慮されるようになります。

このことは「こどもの権利条約」第12条にも記載されています。

こどもの権利条約第12条

第12条

締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。

このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

こびとちゃん
こびとちゃん

ちゃんとこどもの権利条約が反映されているのですね!

ここでのポイントは2つです。

  • こどもの意見をどうやって聴く?
  • こどもの意見をなんでも反映させる?

それぞれ解説していきます。

こどもの意見をどうやって聴く?

そもそも子どもの意見をどうやって聴いていけばよいのでしょうか?

現在では以下のような例が挙げられています。

こどもの意見の聞き方(例)

・ こどもや若者を対象としたパブリックコメントの実施。

・ 審議会・懇談会等の委員等へのこどもや若者の参画の促進。

・ こどもや若者にとって身近なSNSを活用した意見聴取などこどもや若者から直接意見を聴く仕組みや場づくり。

(引用:こども基本法案)

こびとちゃん
こびとちゃん

パブリックコメントって何ですか?

パブリック・コメントとは?
国の行政機関は、政策を実施していくうえで、さまざまな政令や省令などを定めます。これら政令や省令等を決めようとする際に、あらかじめその案を公表し、広く国民の皆様から意見、情報を募集する手続が、パブリック・コメント制度(意見公募手続)です。(引用:e-GOVパブリック・コメントより)

具体的にどのような措置の場合意見を聞くのか?頻度は?どの程度反映するのか?など意見を聴いたうえで施策へ反映するかどうかは、その施策によっても異なります。

また、こどもは発達の途上であることから、意見をいうことが難しい場合もあります。

ファシリテーターやサポーターのような役割の人がうまく場づくりをしながら、意見を聴いていく必要があります。

こどもの意見はなんでも反映させるべき?

こどもの意見を政策に取り入れることに疑問を持つ人もいるかもしれません。

先ほども記載した、「こどもの権利条約」に関して意見表明についてはこのように記載されています。

第12条 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。 この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。

(引用:こどもの権利条約)

権利というものは「自己決定能力」と「自己責任」がワンセットになっています。

「自己決定」をする代わりに「自己責任」が伴うのです。

こびとちゃん
こびとちゃん

お菓子を自分の意志で食べた結果…太るのは自己責任ですものね…!!

しかし、こどもには責任を果たす能力はありません。「自律した大人」への発展途上だからです。

だからこそ、こどもには「発展途上という特性」を考慮した権利が必要になります。

そこで、「意見を表明する自由」はあれども大人は「年齢及び成熟度に従って相応に考慮」しなければいけない、というわけです。

こどもの意見を全て取り入れる、というわけではなく、意見を聴き、

そのことは「こども基本法案」にも明記されています。

「こども施策を決定する主体(各省各庁の長、地方公共団体の長等)が、当該施策の目的等を踏まえ、こどもの年齢や発達の段階、実現可能性などもしっかり考慮しつつ、こどもの最善の利益を実現する観点から、施策への反映について判断することとなります。」

(引用:こども基本法案より)

こびとちゃん
こびとちゃん

こどもの意見を積極的に聴いていきたいですね✨

12条総合的かつ一体的な提供のための体制整備

(こども施策に係る支援の総合的かつ一体的な提供のための体制の整備等)
第十二条 国は、こども施策に係る支援が、支援を必要とする事由、支援を行う関係機関、支援の対象となる者の年齢又は居住する地域等にかかわらず、切れ目なく行われるようにするため、当該支援を総合的かつ一体的に行う体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

(引用:こども基本法案)

第12条では「こどもの施策は総合的かつ、一体的におこなうようにしてください」という旨が記載されています。

こびとちゃん
こびとちゃん

なぜ、わざわざこのような事を書くのですか?

こびと園長
こびと園長

こども政策には3つの壁があるとされているからです。

こども政策3つの壁
・年齢の壁
・こどもが必要とする施策ごとの制度の壁
・施策を講ずる関係省庁の縦割りの壁
こびとちゃん
こびとちゃん

こんな壁があるとは…。

この壁を取っ払い、総合的にすすめるよう、法律で明記することは大切なことだと思います。

第13条、第14条関係者相互の有機的な連携の確保等

(関係者相互の有機的な連携の確保等)
第十三条 国は、こども施策が適正かつ円滑に行われるよう、医療、保健、福祉、教育、療育等に関する業務を行う関係機関相互の有機的な連携の確保に努めなければならない。
2 都道府県及び市町村は、こども施策が適正かつ円滑に行われるよう、前項に規定する業務を行う関係機関及び地域においてこどもに関する支援を行う民間団体相互の有機的な連携の確保に努めなければならない。
3 都道府県又は市町村は、前項の有機的な連携の確保に資するため、こども施策に係る事務の実施に係る協議及び連絡調整を行うための協議会を組織することができる。
4 前項の協議会は、第二項の関係機関及び民間団体その他の都道府県又は市町村が必要と認める者をもって構成する。
第十四条 国は、前条第一項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関が行うこどもに関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 都道府県及び市町村は、前条第二項の有機的な連携の確保に資するため、個人情報の適正な取扱いを確保しつつ、同項の関係機関及び民間団体が行うこどもに関する支援に資する情報の共有を促進するための情報通信技術の活用その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(引用:こども基本法案)
こびとちゃん
こびとちゃん

もうそろそろ頭が限界に近づいています…。

こびと園長
こびと園長

あと少しでゴールですよ!

第13条・第14条ではこども施策の円滑な実施をするために、各関係機関が連携を取ってくださいね、という旨が書かれています。

こどもの問題を解決しようとした際に、医療機関や教育機関だけで解決しようとしても、無理が生じる可能性があります。

こどもの目線に寄り添った、子育て支援団体や民間団体など巻き込んで問題解決を図ったほうが良いケースもあります。

そのため、各関係機関が連携を取り合うよう、法律で定めることが大切なのです。

こびとちゃん
こびとちゃん

連携ってどんな風にとるのですか?

こびと園長
こびと園長

協議会の設置などが想定されているようです。

協議会の具体例
・地方青少年問題協議会法に基づき、重要事項の調査審議や関係行政機関相互の連絡調整を図る、都道府県青少年問題協議会・市町村青少年問題協議会。
・子ども・子育て支援法に基づき、施策の総合的かつ計画的な推進に関し必要な事項等の調査審議等を行う合議制の機関(地方版子ども・子育て会議)。
・子ども・若者育成支援推進法に基づき、関係機関等が行う支援を適切に組み合わせることによりその効果的かつ円滑な実施を図るため、関係機関等により構成される子ども・若者支援地域協議会。
・児童福祉法に基づき、要保護児童の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者により構成される要保護児童対策地域協議会。

これらは根拠の違う法律のもとに協議会が設置されています。非常にややこしいですね。

これらを総合的に統括する法律としても、こども基本法は有効だと思います。

第15条この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容についての周知

第十五条 国は、この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容について、広報活動等を通じて国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものとする。

(引用:こども基本法案)

第15条はこども基本法や権利条約を周知する内容が記載されています。

2019年に日本財団がおこなった3万人規模のアンケートでこどもの権利条約を聴いたことがない大人は約4割にものぼりました。

日本財団-こども基本法Webサイトより

「内容までよく知っている」2.2%と「内容について少し知っている」が14.2%です。

内容について知っている大人は合わせてもたったの16.4%です。

今後、もっとこどもの権利やこども基本法について広く知られることを願っています。

こども家庭庁やこども基本法は「こども家庭庁設置準備室」で詳しく知ることができます。

こびとちゃん
こびとちゃん

興味を持って、知っていきましょう✨

第16条こども施策の充実及び財政上の措置等

第十六条 政府は、こども大綱の定めるところにより、こども施策の幅広い展開その他のこども施策の一層の充実を図るとともに、その実施に必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない。

(引用:こども基本法案)

第16条は財政についてです。

第16条でしっかりとこども施策の充実と、その実施に必要な予算をつけるよう努力する義務があります。

こびとちゃん
こびとちゃん

努力なんですか…。

現在はまだこども大綱ができあがっていません。

国はこの「こども大綱」に必要な予算をしっかりつける、というスタンスですので、こども大綱ができあがってない状態ではまだ、何とも言えません。

さらに、こども大綱ができあがっても本当に予算をつけるかどうかは未知数です。

今後の国の動向をしっかりと注意してみていきたいですね。

第17条~第20条こども政策推進会議

(設置及び所掌事務等)
第十七条 こども家庭庁に、特別の機関として、こども政策推進会議(以下「会議」という。)を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 こども大綱の案を作成すること。
二 前号に掲げるもののほか、こども施策に関する重要事項について審議し、及びこども施策の実施を推進すること。
三 こども施策について必要な関係行政機関相互の調整をすること。
四 前三号に掲げるもののほか、他の法令の規定により会議に属させられた事務
3 会議は、前項の規定によりこども大綱の案を作成するに当たり、こども及びこどもを養育する者、学識経験者、地域においてこどもに関する支援を行う民間団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
(組織等)
第十八条 会議は、会長及び委員をもって組織する。
2 会長は、内閣総理大臣をもって充てる。
3 委員は、次に掲げる者をもって充てる。
一 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣であって、同項の規定により命を受けて同法第十一条の三に規定する事務を掌理するもの
二 会長及び前号に掲げる者以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
第十九条・第二十条 (略)

(引用:こども基本法案)

最後は「こども政策推進会議」に関する内容です。

こびとちゃん
こびとちゃん

「こども政策推進会議」ってなんですか?

こども政策推進会議とは?
こども家庭庁に設置された、内閣総理大臣を長とした閣僚会議です。
こども大綱の案を作成し、こども施策の実施を推進する政府全体の司令塔の役割を果たします。

こども政策推進会議の中で「こども及びこどもを養育する者、学識経験者、地域においてこどもに関する支援を行う民間団体その他の関係者の意見を反映させる」としっかり明記されています。

今後、こども大綱が作成され、子育てしやすい政策がどんどん推進していくと良いですね!

こびと園長
こびと園長

こども政策推進会議の動きにも注目です!

まとめ

なぜ「こども基本法」が必要?
日本には「こどもを守る法律」はあっても、「こどもの権利を保障する法律」はないため。
こどもの権利を守る法律がないと、包括的に支援できずに権利侵害が起きてしまったり、政策が後回しになってしまったりする。
こども基本法成立の背景
・国際条約である「こどもの権利条約」を批准したこと。
・2016年改正の児童福祉法の中に「児童の権利」が初めて明記されたこと。
・新型コロナウイルス感染拡大によりこどもの権利が侵害された可能性があったこと。
・児童虐待やいじめ問題など、こどもに関する問題が増加したこと。
こども基本法の内容
全20条で構成されている。
第1条
目的
第2条
定義
第3条
基本理念
第4~7条
責務等
第8条
年次報告
第9条
こども大綱
第10条
都道府県こども計画、市町村こども計画
第11条
こどもの意見反映
第12条
総合的かつ一体的な提供のための体制整備
第13~14条
関係者相互の有機的な連携の確保等
第15条
この法律及び児童の権利に関する条約の趣旨及び内容についての周知
第16条
こども施策の充実及び財政上の措置等
第17~20条
こども政策推進会議

以上です。

こども家庭庁及びこども基本法の内容は「こども家庭庁設置準備室」にて見ることができます。

こびとちゃん
こびとちゃん

こども達との意見交換の様子や保育に関係する話も見れますよ!

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ぜひご覧ください!

こどもに関わる全ての人へエールを!