「不適切な保育」をわかりやすく解説!対応や対策も。

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「不適切な保育」をわかりやすく解説!対応や対策も。

不適切な保育ってなに?

最近、よくニュースなどで耳にする「不適切な保育」。

皆さんはどのように捉えているでしょうか?

もし何となくの感覚で、曖昧にこの言葉を使用しているのであれば、ざっくりでも内容を確認しておいた方が良いかもしれません。

誰しもが不適切な保育をしたくないはず…。

それならば、まずは不適切な保育が一体何なのか?という事を理解する事が大切です。

今回は厚生労働省が公表した「不適切保育に関する対応についての調査研究(以下:手引き)」をざっくり解説します!

こびとちゃん
こびとちゃん

今回はざっくり解説となります!

こびと園長
こびと園長

公式の文章自体は難しくないので、もっと詳しく知りたい方は公式ページで学んでください。

続編記事もオススメです!

「不適切な保育」とは?

「不適切な保育」の成り立ち

そもそもなぜ「不適切な保育」という言葉が生まれたのでしょう?

きっかけは2021年3月に厚生労働省が「不適切保育に関する対応についての調査研究」について、という調査結果を公表したことが始まりでした。

保育園は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」というものに従って運営しています。

その中の第9条の2において、このように定められています。

「児童福祉施設の職員は、入所中の児童に対し、(中略)当該児童の心身に有害な影響を与える行為をしてはならない。」

こびとちゃん
こびとちゃん

これが保育園で体罰を禁止する根拠というわけですね。

こびと園長
こびと園長

保育所保育指針でも体罰や「肉体的・精神的苦痛を与える行為」の禁止は明記されています。

近年、保育所内における不適切な保育や、それに類する事例の報告や報道が相次いでされるようになりました。

しかし、この「虐待まではいかなくとも、子どもとの関わりにおいて適切ではない関わり」をしている職員への対応において国から自治体に対して統一した指示はありません。

そこで厚生労働省は株式会社キャンサースキャンに不適切な保育の調査や手引きの作成を依頼した、というわけです。

こびとちゃん
こびとちゃん

ここで「不適切な保育」という言葉が生まれたのですね。

「不適切な保育」の定義

「不適切な保育」の定義は以下のようにされています。

不適切な保育の定義

保育所での保育士等による子どもへの関わりについて、保育所保育指針に示す子どもの人権・人格の尊重の観点に照らし、改善を要すると判断される行為

こびとちゃん
こびとちゃん

保育所保育指針が基本的になるのですね。

保育所保育指針の中で「人権」についてのキーワードはこのように記載されていました。

第1章総則より
1 保育所保育に関する基本原則
(2)保育の目標
(ウ) 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと

(5)保育所の社会的責任
ア 保育所は、子どもの人権に十分配慮するとともに、子ども一人一人の人格を尊重して保育を行わなければならない。
第5章 職員の資質向上より
1 職員の資質向上に関する基本的事項
⑴ 保育所職員に求められる専門性
子どもの最善の利益を考慮し、人権に配慮した保育を行うためには、職員一人一人の倫理観、人間性並びに保育所職員としての職務及び責任の理解と自覚が基盤となる。

保育所保育指針については目指すべき方向性が記載されているので、具体的な事例は記載されていません。

保育において、子どもの発達や特性に合わせた個別の関わりをすることが基本ですので、「これが不適切だ!」と具体的に定義するのはなかなか難しいです。

保育所保育指針同様、不適切な保育に関しても、現在は具体的な行動が明記されているわけではありません。

あくまで保育所保育指針にそぐわない行為のことを指します。

今回の調査や手引きでは具体例として以下のような事が挙げられています。

不適切な保育の行為類型
① 子ども一人一人の人格を尊重しない関わり
② 物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ
③ 罰を与える・乱暴な関わり
④ 子ども一人一人の育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり
⑤ 差別的な関わり
こびと園長
こびと園長

この内容は今後どんどんブラッシュアップされていくかもしれませんね。

なぜ「不適切な保育」が起こる?本人と周囲の環境が要因。

不適切な保育が生まれる背景として、調査の中では本人の認識要因と周囲の環境要因の2つが挙げられました。

どちらか一方が問題がある…というわけではなく、本人の問題と保育園全体の問題と、両方の要因が揃って不適切な保育をしてしまう可能性があります。

本人の認識要因

本人の認識要因

・子どもの人権に関する理解が十分でないため、無自覚に不適切な保育をしてしまう。

上記の不適切な保育の定義で確認した通り、不適切な保育は「保育所での保育士等による子どもへの関わりについて、保育所保育指針に示す子どもの人権・人格の尊重の観点に 照らし、改善を要すると判断される行為」とされています。

子どもの人権に関する知識はちゃんとあるか?尊重する意識はあるか?

そもそも、この子どもの人権や人格の尊重に関する知識がなければ、当然守ることはできません。

こびとちゃん
こびとちゃん

たしかに「子どもの権利」ってちゃんと説明できないかもしれません…。

環境の要因

環境の要因

・保育士が余裕を持って保育に望めない

・日々の保育を職場全体で振り返る体制が整っていない

・保育士が一人きりで保育を任されている状況が多いなど物理的な環境の問題がある

不適切な保育が起きてしまう原因のもう1つは環境要因です。

環境要因とは、本人の力だけでは変えることのできない要因のことです。

本来、保育士も不適切な保育を起こしたくて起こしていないはずです。

起きてしまう理由として環境が原因なのかもしれません。

こびとちゃん
こびとちゃん

本人の努力だけではどうにもできない事もありますものね…。

こびと園長
こびと園長

この環境を整えるのは運営者の役割ですね。

不適切な保育を未然に防ぐために

防止策は保育園・市区町村や都道府県が一体となって取り組む事が求められる

不適切な保育が起きてしまう背景として、本人の認識と環境の要因があることがわかりました。

これらは園内におけるマネジメントの領域ですので、保育園全体で取り組む必要があります。

しかし、それだけでは不十分です。

なぜなら、保育園がちゃんと未然に防ぐ取り組みをしているかどうか、チェックする役割が必要だからです。

手引きの中では、未然に防ぐためには、市区町村や都道府県も一体になっておこなうことが重要、と明記されています。

それぞれ、どのような対策が必要なのかをみていきましょう。

保育園が対策するべきこと

保育園が対策すべきこと

① 保育士に対し、子どもの人権・人格の尊重の観点に照らして適切な保育についての教育・研修を行うこと

② 第三者評価や公開保育等を活用し、日々の保育の在り方に関する保育士の気づきを促すこと

③ 保育の計画の作成や振り返りに当たっては、不適切な保育が生じないよう配慮すること

④ 不適切な保育が生じないような職場環境を整備すること(不適切な保育防止の担当者の設置や、不適切な行為が疑われる場合の報告プロセスの整備等)

⑤ 不適切な保育が生じないような職員体制の整備を行うこと(保育士が余裕を持って子どもと向き合える職員体制の整備等)

①~⑤までありますが、ポイントとしては以下の3つだと思います。

  • 対話や振り返りの機会を作ること
  • 働き方を見直すこと
  • 担当者を設置すること

それぞれ解説していきます。

「対話や振り返りの場」を設けること。

本人が無自覚で不適切な保育をしてしまっている場合、当然それを修正するのは周囲の職員の役割です。

  • 子どもの権利について研修などで学べる機会があること。
  • 保育士同士の振り返りの場や話し合いの場を設けること。
  • 保育園の理念が子どもの権利や最善の利益を侵害していないか、定期的に見直すこと。
  • 「第三者評価」「保育所における自己評価ガイドライン」など外部の評価と照らし合わせること。

また、事業所の理念がそもそも子どもの権利や最善の利益とかけ離れてしまっている場合もあります。

そういった日頃の保育を振り返り、自身の関わりを見直すことが不適切な保育を起こさない対策へと繋がります。

こびと園長
こびと園長

対話によって、早い段階で不適切な保育が修正されることもありますからね。

そのために職員同士で「対話」することが必要になってきます。

手引きの中にはこのような記載がされています。

「保育士は、経験や自身の常識を過信することなく、子どもとの関わり方が適切なものであるか振り返り、子どもの最善の利益が尊重されているか意識する必要がある。」

『日々の保育について、定期的に振り返りを行い、「子どもに対する接し方が適切であったか、より望ましい対応はあったのか」等、保育士同士で率直に話すことができる場設けること等も、全職員が適切な保育を行うための認識を共有する上で、非常に重要な取り組みである。』

こびとちゃん
こびとちゃん

色々な人と対話することが大切なのですね…。

対話についてはコチラの記事でも解説しています。

「働き方を見直す」こと

環境による対応は以下の通りとされています。

  • 保育士が丁寧に子どもに向き合える職員体制の整備。
  • 保育士の事務負担の軽減等による勤務状況の改善。
  • 保育士が保育に関する悩みを相談できる仕組み等の整備。

いわゆる「働き方改革」だと思います。

いかに本人に自覚があっても、働きすぎてストレスが溜まってしまったり、人間関係が悪く、相談相手がいなかったりすると、その矛先は子どもに向かってしまう可能性があります。

現場の保育士、運営管理者が一体となって、この取り組みを行っていくことが大切だと思います。

担当者を設置しておくこと

不適切な保育を発見した場合、なかなかそれを指摘することは難しいです。

こびとちゃん
こびとちゃん

後輩ならともかく…先輩がしている場合もありますものね。

もちろん、勇気を出して伝えることは大切です。

その一歩を踏み出すハードルを下げるために担当者を決めておき、周囲に周知しておくことが効果的です。

手引きの中でも以下のように記載されています。

「一方で、子どもを預けているという立場の保護者は、保育所において行われる保育に対して何らかの違和感を感じたとしても、保育士に対して直接指摘をしにくいことも想定される。
そうした場合に気軽に相談できる担当者を保育所内で設けておくことは、不適切な保育の早期発見・改善の機会となるとともに、保護者の安心にもつながると考えられる。」

こびとちゃん
こびとちゃん

保護者にとっても安心ですね!

こびと園長
こびと園長

不適切な保育を発見するのは保育士だけとは限りませんものね。

保育園の実態に合わせた改善を。

不適切な保育が行われる背景の整理

こちらの表はこれまでの話をまとめた表です。

保育士の理解度、園内の環境整備、務めている保育園がどの立ち位置にいるのか、正しく把握しましょう。

把握ができたら、それぞれ環境を改善していく取り組みをしていきましょう。

市区町村・都道府県が対応すべきこと

市区町村が対応すべきこと

① 保育所保育指針等の関係法令を踏まえ、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方を都道府県と連携して整理すること

② 都道府県と連携し、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方の周知や、保育現場で活用できるチェックリストやガイドライン等の配布、研修実施等により保育所を支援すること

③ 各保育所において適切な保育が実現されているか、保育所に対して助言・指導を行うこと

都道府県が対応すべきこと

① 保育所保育指針等の関係法令を踏まえ、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方を市区町村と連携して整理すること

② 市区町村と連携し、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方の周知や、保育現場で活用できるチェックリストやガイドライン等の配布、研修実施等により保育所を支援すること

③ 児童福祉法に基づき、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育が行われているか、また、そのための体制が整っているかについて、保育所に対する監査及び指導を行うこと

こびとちゃん
こびとちゃん

①②は一緒ですが、③だけちょっと違いますね。

こびと園長
こびと園長

都道府県が主導の監査をおこなうので、そこが強調されていますね。

市区町村は主に保育園が不適切な保育を行わないよう、一体となっておこなうべきとされています。

また、手引きのなかではこのように明記されています。

「どのような関わりが適切又は不適切であるのか、その前提となる考え方を整理するのは、地域の全ての子どもに対して“子どもの最善の利益”を保障する観点から、保育の実施主体である市区町村及び認可・監督主体である都道府県が緊密に連携して行うことが望ましい。
また、不適切な保育に関する考え方の整理に当たっては、保育現場の実情に即したものとすることが重要であるため、都道府県及び市区町村と保育関係者との間でも、情報共有や協議を行いつつ考え方を整理することが期待される。」

保育園は全国各地にあり、地域柄の特性や事情がそれぞれ異なります。

それらを一律におこなうのではなく、地域の実態に合ったチェックリストやガイドラインの策定をしましょう、とされています。

調査でわかるように、そもそもどのような行為が不適切な保育に当たるのか、きちんと整理されていないのが現状です。

2022年12月5日の静岡県裾野市での保育士による園児暴行事件に関しても、裾野市長が園長を刑事告発しています。

静岡県裾野市の私立の認可保育園「さくら保育園」で、1歳児クラスを受け持っていた女性保育士3人=いずれも退職=が園児の頭を殴るなどしていたとして暴行容疑で逮捕された事件で、市は5日、桜井利彦園長を犯人隠避の疑いで静岡県警裾野署に刑事告発した。

今回の保育士の子どもに対する行動はあってはならないものです。

しかし、行政と保育園がちゃんと不適切な保育について、整理し、共有することができていない現状があるのであれば、そこはちゃんと整理されるべきです。

こびとちゃん
こびとちゃん

そうじゃないと…毎日ビクビクしながら保育することになってしまいます…。

不適切な保育が起きてしまったらどうする?

もし不適切な保育が起きてしまった場合、どのようになってしまうのでしょう?

手引きでは以下のように示されています。

不適切な保育が起きてしまった場合

①(疑いの場合)事案の把握

②事実確認

③改善計画およびそれを支える指導

①に関しては確定、というわけではなくあくまで疑いレベルでの対応です。

それぞれ、保育園側がすべきことと市区町村及び都道府県側がすることとに分かれて対応方針が明記されています。

①(疑いの場合)事案の把握

保育所の役割「事案把握と⾏政への迅速な情報提供」

不適切な保育がおこなわれる前段階、なにか違和感を感じた段階ではリーダー層の職員や施設長へ報告することが望ましいとされています。

不適切な保育かどうか、もしかしたら認識の違いによるものの可能性もあるからです。

この場合のほとんどは当事者同士の話し合いやリーダー層・施設長からの注意喚起で解決することが多いです。

市区町村及び都道府県側の役割「⾏政における相談窓⼝の設置」

行政においても、相談の窓口を設置することが望ましいとされています。

「市区町村及び都道府県においては、保育士等や保護者が、保育所において行われる保育に対して違和感を感じた場合に相談できる先として、対応窓口を設けることが考えられる。」

保育園のリーダー層や施設長など、内部の人間だからこそ言いにくいケースもあります。

こびとちゃん
こびとちゃん

静岡県裾野市は園長に言っても改善されなくて、市に報告しましたものね…。

そうなった際に行政に気軽に相談できる窓口があると、気軽に相談することができ、早期予防に繋がるかもしれません。

相談窓口やコールセンター等をすでに設置している自治体もあるようです。

手引きの中では都道府県は 15.6%、政令市・中核市・児童相談所設置市は 22.2%、それ以外の市区町村は 23.8%と報告されています。

こびと園長
こびと園長

窓口がなくても、相談先を確認し、職員で共有するのも良いかもしれません。

②事実確認

保育園側の対応「改善を念頭に置いた事実確認」

もし不適切な保育を確認した場合、保育園は情報提供をしてくれた職員や当事者の職員に事実の確認を行う必要があります。

事実確認のポイントは次の点です。

事実確認のチェックポイント

・不適切な保育が疑われる行為の有無(それが生じた具体的状況)

・不適切な保育が疑われる行為に至った背景(保育士の意識、子どもの個別事情、など)

・不適切な保育が疑われる行為が繰り返し行われていたのか(再発可能性)

この事実確認の時に心がけなければいけないのは、全ての責任を当事者に負わせるようなことはしないという点です。

不適切な保育が起きてしまう理由は、本人の認識、環境の2つの要因からなると解説してきました。

つまり、仮に本人がおこなった行為だとしても、周りの環境が不十分だった可能性も否定できません。

組織として改善に向けた取り組みをおこなっていくことを念頭にヒアリングすることが大切です。

手引書の中にも記載されています。

不適切な関わりが、職場環境等によるものである場合もあり得ることを意識し、仮に保育士の認識の問題から生じた行為であった場合においても、保育士個人に全ての責任を求めることなく、今後組織として改善に向けた取り組みを行っていくことを念頭に置いた事実関係等の確認を行うことが望まれる。

事実確認をしたうえで、市区町村の担当者に情報提供をし、今後の対応を協議していくことになります。

行政の対応「共有と指導監査」

行政側が保育園から不適切な保育の報告を受けた場合、相談者や保育園から丁寧に事実の確認をおこない、市区町村や都道府県で共有される必要があります。

指導監査をおこなう場合は、再発防止に向けた取り組みなど、丁寧に指導することが重要とされています。

③事実確認後の対応

保育園の対応「組織的な改善の取り組みと⼦ども・保護者へのケア」

不適切な保育を起こしてしまった場合、保育園はすぐに組織の改善をします。

改善のポイントとして以下の点が挙げられます。

改善する時のポイント

・施設長を中心に改善計画を策定する。

・個別の事案として取り扱わず、その背景を理解したうえで、保育所全体の問題として捉える。

これまで繰り返し見てきた通り、不適切な保育は本人の認識と職場の環境の両方の要因により起きてしまいます。

個人の問題で終わらせず、組織全体で見直すべき点を考えていくことが大切です。

こびとちゃん
こびとちゃん

口封じの同意書ではいけないわけですね…。

同時に、保護者へのケアも必要になります。

この場合の保護者は当事者だけではなく、保育園全体における保護者です。

保護者会を開く、文章で説明する…など誠意のある対応を心がけましょう。

保護者へケアを行う場合のポイントは以下の2つです。

保護者へのケアを行うポイント

・当事者だけではなく、全体の保護者に説明をする。

・不適切な保育がおこなわれた経緯や今後の対応などを丁寧に説明する。

・当事者の保護者に他の保護者へ概要を伝えて良いか、同意を得る。

誠心誠意をもって、説明していくことが求められます。

行政の対応「指導監査の実施と保育所による改善の取り組みへの助⾔・指導」

指導監査をもって、事実の確認をおこなったあとは行政側は以下のように対応します。

  • 書面指示や改善勧告等による改善の指示
  • 保育所が策定する改善計画の立案を支援・指導
  • 改善計画を実行する上での助言・指導

行政側としても、不適切な保育が行われた場合は個人の責任だけで完結することはせず、組織全体の改善をサポートします。

不適切な保育がおこなわれてしまう背景、組織的な課題は様々です。

その事業所に合った改善計画をサポートしていきます。

保育所における不適切な保育の改善及び再発防止のための支援
・他の施設等で保育を経験した立場からの助言
・他の保育所の取り組み等を知る立場からの助言や、具体的ケースの共有
・保育所の組織マネジメントに関する助言・指導
・保育士への研修や教育に関する助言・指導
こびとちゃん
こびとちゃん

自分たちだけで改善計画を実行するのは、難しい場合もあるでしょうしね。

こびと園長
こびと園長

一緒に協力してくれる仲間だと思っていきたいです。

保育園と自治体の連携の実践例

「不適切な保育に関する対応について」の中には、不適切な保育を防ぐために保育園と自治体の連携の実践例が紹介されています。

これまで見てきた通り、不適切な保育を防ぐためには、個人の努力、保育園の努力だけでは完全とは言えません。

実践例をもとに、自治体などに働きかけ、協力関係のもと対策していくことが大切です。

実践事例はコチラ

まとめ

「不適切な保育」の成り立ち
・2021年3月に厚生労働省が「不適切保育に関する対応についての調査研究」について、という調査結果を公表したことが始まり。
・保育園は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第9条の2」において、「児童福祉施設の職員は、入所中の児童に対し、(中略)当該児童の心身に有害な影響を与える行為をしてはならない、」と定められている。
・保育所内における不適切な保育や、それに類する事例の報告や報道が相次いでされるようになる。
・「虐待まではいかなくとも、子どもとの関わりにおいて適切ではない関わり」をしている職員への対応において国から自治体に対して統一した指示がない。
・厚生労働省が調査。
不適切な保育とは?
保育所での保育士等による子どもへの関わりについて、保育所保育指針に示す子どもの人権・人格の尊重の観点に照らし、改善を要すると判断される行為
不適切な保育が起きる背景は?
・本人の認識…子どもの人権に関する理解が十分でないため、無自覚に不適切な保育をしてしまう。
・環境…・保育士が余裕を持って保育に望めない、日々の保育を職場全体で振り返る体制が整っていない、保育士が一人きりで保育を任されている状況が多いなど物理的な環境の問題がある
保育園が未然に防ぐためのポイント
① 保育士に対し、子どもの人権・人格の尊重の観点に照らして適切な保育についての教育・研修を行うこと
② 第三者評価や公開保育等を活用し、日々の保育の在り方に関する保育士の気づきを促すこと
③ 保育の計画の作成や振り返りに当たっては、不適切な保育が生じないよう配慮すること
④ 不適切な保育が生じないような職場環境を整備すること(不適切な保育防止の担当者の設置や、不適切な行為が疑われる場合の報告プロセスの整備等)
⑤ 不適切な保育が生じないような職員体制の整備を行うこと(保育士が余裕を持って子どもと向き合える職員体制の整備等)
市区町村が未然に防ぐためのポイント
① 保育所保育指針等の関係法令を踏まえ、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方を都道府県と連携して整理すること
② 都道府県と連携し、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方の周知や、保育現場で活用できるチェックリストやガイドライン等の配布、研修実施等により保育所を支援すること
③ 各保育所において適切な保育が実現されているか、保育所に対して助言・指導を行うこと
都道府県が未然に防ぐためのポイント
① 保育所保育指針等の関係法令を踏まえ、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方を市区町村と連携して整理すること
② 市区町村と連携し、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育についての考え方の周知や、保育現場で活用できるチェックリストやガイドライン等の配布、研修実施等により保育所を支援すること
③ 児童福祉法に基づき、子どもの最善の利益を考慮した適切な保育が行われているか、また、そのための体制が整っているかについて、保育所に対する監査及び指導を行うこと
不適切な保育が起きた場合の対応(保育園)
①事案把握と⾏政への迅速な情報提供
②改善を念頭に置いた事実確認
・不適切な保育が疑われる行為の有無(それが生じた具体的状況)
・不適切な保育が疑われる行為に至った背景(保育士の意識、子どもの個別事情、など)
・不適切な保育が疑われる行為が繰り返し行われていたのか(再発可能性)
③組織的な改善の取り組みと⼦ども・保護者へのケア
(改善のポイント)
・施設長を中心に改善計画を策定する。
・個別の事案として取り扱わず、その背景を理解したうえで、保育所全体の問題として捉える。
(保護者へのケアのポイント)
・当事者だけではなく、全体の保護者に説明をする。
・不適切な保育がおこなわれた経緯や今後の対応などを丁寧に説明する。
・当事者の保護者に他の保護者へ概要を伝えて良いか、同意を得る。
不適切な保育が起きた場合の対応(行政)
①相談窓⼝の設置
②市区町村や都道府県で共有、指導監査
③保育所による改善の取り組みへの助⾔・指導
(保育園への支援)
・書面指示や改善勧告等による改善の指示
・保育所が策定する改善計画の立案を支援・指導
・改善計画を実行する上での助言・指導
(保育所における不適切な保育の改善及び再発防止のための支援)
・他の施設等で保育を経験した立場からの助言
・他の保育所の取り組み等を知る立場からの助言や、具体的ケースの共有
・保育所の組織マネジメントに関する助言・指導
・保育士への研修や教育に関する助言・指導

今回の内容はざっくり解説となっております。

公式の調査ではより具体的な解説、自治体との連携事例など、学びになる情報が公開されています。

もっと詳しく知りたい方は、公式の調査報告へお進み下さい。

そんなに難しい文章ではありませんので、読めば理解できるはずです。

続編記事もオススメです!

子どもに関わる全ての大人へエールを!