
こども家庭庁ってなに?
最近、よくニュースで耳にするこども家庭庁。
こども家庭庁とは、どのような省庁なのか説明できますか?
- こども家庭庁とは?
- これまでバラバラにおこなわれていた子どもに関する施策をまとめておこなう省庁です。
・子ども政策の大綱を作成する。
・子どもの個々の家庭状況の調査や支援内容のデータベースを集約する。
・虐待やヤングケアラー、養育が困難な家庭への支援。
これらのことを行い、「こども真ん中社会」の実現を目指します。
こども家庭庁の設立は、子どもと関わる全ての人に関係のある大きな出来事です。
なんとなく知っておきたいけど…なぜ子ども家庭庁が必要なのか?どんな経緯でできたのか?何をするところなのか?全部がわかりやすくまとまっている情報源がありません。
そんなわけで、こども家庭庁の知っておくべき内容をまとめました。
- この記事を読むとわかること
- ・こども家庭庁とは?
・こども家庭庁ができるまで
・なぜこども家庭庁が必要なのか
・こども家庭庁は何をする省庁なのか、私たちはどう変わるのか
・こども家庭庁の今後の課題はなにか
こども家庭庁のことで知るべき内容をほとんど理解することができます。
一緒に勉強しましょう!
なぜこども家庭庁はできたの?

こども家庭庁がどのような省庁かを知るためには、設立された経緯を知るとイメージしやすいと思います。
まずは子ども家庭庁ができた経緯を解説します。
最初の起こりは医師会だった。「成育基本法」の成立。

こども家庭庁の一番最初めは、医師会が声を上げたところが出発点でした。
2004年頃から急速な少子高齢化により、小児医療費助成制度や乳幼児健診、予防接種などの地域間格差が明らかになったのです。
このようなことから、新しく「成育」の概念を導入した法律の作成が行われました。
そして2018年に「成育基本法」の法案が可決されました。
- 成育基本法とは?
- 正式名称「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」と言います。
「成育基本法」は、成長過程にある子どもおよびその保護者、並びに妊産婦に対して、必要な成育医療を切れ目なく提供するための施策を総合的に推進することを目的とする理念法です。(引用:公益社団法人日本小児保健協会ホームページより)

つまりどういう事ですか?

「妊婦や子どもの健全な成育に必要な福祉や医療の施策を進めていきますよ」という法律です。
日本の法律では「児童祉法」「母子保健法」「児童虐待防止法」など、これまで個別の法律でバラバラに対応されてきました。
成育基本法は、これらの施策を連携させ、望まない妊娠を防ぐ性教育、健康教育や食育の充実、母子保健の強化など様々な施策を行っていく法律です。
この成育基本法のポイントは附則に記載してある、次の文章にあります。
「政府は、成育医療等の提供に関する施策を総合的に推進するための行政組織の在り方等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と規定している。

どういう意味ですか?

行政の在り方が良くなかったら、ちゃんと必要な対応をしないとダメ、という事です。
現在の子育てを取り巻く環境は、生育基本法のいう環境ではありません。
なので、この規定を実現させるために、「こども家庭庁」創設を目指す勉強会が自民党の中で発足したのです。

そうやって繋がってくるんですね!ドラマみたい!
しかし、成育基本法だけでは、政府は重い腰をあげませんでした…。
次の転機になったのが「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」の批准です。
「子どもの権利条約」批准が大きな転機。

子ども家庭庁が創設されるきっかけになったのは「児童の権利に関する条約(以下、子どもの権利条約)」を日本が批准したからと言えます。
- 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)とは?
- 1989年子どもの基本的人権を国際的に保障するために定められた条約です。
18歳未満の児童(子ども)を権利をもつ主体と位置づけ、おとなと同様ひとりの人間としての人権を認めるとともに、成長の過程で特別な保護や配慮が必要な子どもならではの権利も定めています。
前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加という包括的な権利を実現・確保するために必要となる具体的な事項を規定しています。(引用:ユニセフ『こどもの権利条約』より)
つまり、こどもは大人と同様、ひとりの人間として人権を認める動きが国際的に広がりました。
こどもの権利の大きな原則があります。それが以下の4つです。

こどもの権利条約4つの原則
・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)
・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)
・子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)
・差別の禁止(差別のないこと)
こどもの権利条約について全て書くと膨大な量になってしまうので、割愛します。
こどもの権利条約について詳しく学びたい方はコチラの書籍が読みやすくてオススメです。

ちなみに日本が子どもの権利条約を批准したのは1994年、世界で158番目とかなり遅いです。ご存じでしたか?
子ども権利委員会から受けた「6つの指摘」
国連は国際人権条約で認められている権利実現のために、国連こどもの権利委員会(以下、委員会)という機関を設置しています。
委員会は全ての国の子どもの人権を守る制度が作られているか、チェックする役割を果たしているのです。
日本も子どもの権利条約を批准してから、1998年、2004年、2010年と委員会の審査を受け、改善点を指摘されています。
そして、2019年に再度日本の現状について審査を受け、以下の6つの点を緊急性の高いものとして強く勧告を受けたのです。
その6つの点とは以下の通りです。
こども権利委員会から指摘を受けた6つの項目
・差別の禁止
・子どもの意見の尊重
・体罰
・家庭と離れて住むことを余儀なくされる子ども
・リプロダクティブヘルス及び精神保健
・罪を犯した子ども(少年)
これとともに、このような事を言われてしまいました。
「委員会は、締約国が、児童の権利に関する包括的な法律を採択し、また既存の法令を本
条約の原則及び規定と完全に調和させるための措置をとるよう、強く勧告する。」
つまり…
いい加減に法律を作りなさーーーい!

ということです。
これを受けた日本はようやく重い腰をあげ、本格的に改善を試みるようになりました。
こうして、子どもの専門機関、つまりこども家庭庁の設立が始まりました。
次の項目ではニュースでも話題になった名称の解説をしていきます。
「こども庁」から「こども家庭庁」に名前が変わったのは、自民党保守派への配慮?

「こども家庭庁」なのか「こども庁」なのか…ニュースで見かけたことはありませんか?
もともとは「こども家庭庁」の名称で構想が練られてきました。
しかし、こども家庭庁設立に向けた勉強会の中で、児童虐待防止の活動を行っている「No More Abuse Tokyo」 の代表を務める風間暁さんが次のように主張しました。
「虐待を受けている子どもにとって、家庭とは『毎日生きることに必死な戦場を指す言葉』であり、家庭は温かい場所でなければいけないという、固定観念とのギャップに苦しむ人がいる」

家庭という場所によって苦しめられる人もいるのですね…。
めでたし、めでたし!…というわけにもいきませんでした。
それが2021年の12月に突然「こども家庭庁」へ名称が変更されたのです。
子ども関連施策の司令塔新組織 名称は「こども家庭庁」で調整(2021年12月14日NHK)
ここにきていきなり!?

この部分がニュースになりましたね。
これは自民党の保守派議員からこのような主張がでてきたからです。
子どもは家庭を基盤に成長する。家庭の子育てを支えることは子どもの健やかな成長を保障するのに不可欠。
保守派というのは「伝統的家族観」を重んじる派閥です。

伝統的家族観ってなんですか?

ちゃんとした定義は調べてもわかりませんでしたが…「子どもは家庭で育ち、親は子どもを教育してから社会に出す」という家族論のことのようです。
色々な疑惑が生まれながらも、この主張が最終的には通りました。
こうして、「こども庁」は「こども家庭庁」に変更になったのです。
冒頭で説明したように、こども家庭庁は「成育基本法」と「こどもの権利条約」を実現させるための組織です。
こどもの権利条約は「こどもの主権を認め、すべてのこどもが健やかに育つ権利を保障する」というものです。
「こどもは家庭を基盤に育つ」というのは確かに間違いではありません。
しかし、家庭で育てない子どもがいることや、子どもの問題を家庭の責任に転嫁する動きになりやすい、そのような点で個人的には懸念が残る結果になったと思います。
いよいよ子ども家庭庁の中身について解説していきます!

この名称変更が、政策にどう影響するのか…これから注目ですね。
こども家庭庁の内容を知ろう!

ついにこども家庭庁が設立…!
なんやかんやありながらも、とうとう2022年6月15日に「子ども基本法」が成立しました。
それに伴い「子ども家庭庁設置」、「こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律」が成立し、2023年4月から本格的にこども家庭庁がスタートすることになりました。
これにより、日本で初めて子どもの権利を明確にする法律が誕生したのです。

「児童福祉法」や「教育基本法」は違うのですか?.

それらは「子どもが守られる」法律であって、子どもを権利の主体として位置付けた法律は「子ども基本法」が初めてなのです。
子ども基本法はとてもとても大切なテーマですが、この記事内で取り扱うと膨大な量になってしまいますので、割愛します。
概要
子ども家庭庁の概要について説明していきます。
この部分は内閣府ホームページ「子ども家庭庁の推進」より
「こども政策の新たな推進体制に関する基本⽅針のポイント 」
「こども家庭庁設置法」を参考に作成しています。
こども家庭庁はどこに所属しているの?

こども家庭庁は内閣府の外局として位置付けられます。
- 外局とは?
- 中央官庁に直属し、しかも独立官庁のような性質を持つ機関のことです。
こども庁の他にも金融庁、防衛庁などの組織があります。

厚労省や文科省との違いってなんですか?

文科省や厚労省、内閣府は内閣の中の1組織です。こども家庭庁は内閣府直属の組織となります。

(図表:人事院『国の行政機関組織図』)
日本の内閣は1府12省庁で構成されています。
こども庁はその中の内閣府外局として位置付けられ、内閣府直属の組織となります。

かなり重要な組織というわけですね!
理念
こども家庭庁の理念は以下の6つになります。

内容的には
- 子どもの視点での政策。
- 家庭が基盤。家庭も切れ目のない支援を。
- アウトリーチ型(訪問型)の支援を。
この事が強調されています。
目的
こども家庭庁の目的はこちらになります。
- こども家庭庁の目的
- こども(心身の発達の過程にある者をいう。以下同じ。)が自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現に向け、子育てにおける家庭の役割の重要性を踏まえつつ、こどもの年齢及び発達の程度に応じ、その意見を尊重し、その最善の利益を優先して考慮することを基本とし、こども及びこどものある家庭の福祉の増進及び保健の向上その他のこどもの健やかな成長及びこどものある家庭における子育てに対する支援並びにこどもの権利利益の擁護に関する事務を行うとともに、当該任務に関連する特定の内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とするこども家庭庁を、内閣府の外局として設置することとし、その所掌事務及び組織に関する事項を定める。(「こども家庭庁設置法」の概要より)

ちんぷんかんぷんです…。
要約すると、このような感じになります。
- こども家庭庁の目的
- 子どもが自立した個人として等しく健やかに成長する社会の実現を目指す。
子どもと家庭の福祉の増進・保健の向上等の支援。
子どもの権利利益を擁護することが任務。

まさに子どものための省庁なのですね!
基本的な姿勢

こども家庭庁は次の項目を基本的な姿勢として挙げています。
- こども家庭庁の基本的な姿勢
- ・こどもの視点・子育て当事者の視点に応じて政策に反映させること。
・地方自治体との連携を強化する。
・NPOをはじめとする積極的な対話・連携・協働をし、ネットワークを強化していく。

こうやって文章で見ると、今まで子育て政策って誰がやってたの?という感じになりますね。

本当にその通り。国もそこに危機感を抱いているようです。
子ども家庭庁の役割として、次のような事が強調されています。
強い司令塔機能

日本のこども政策として、各省庁が子どもの政策についてバラバラで動いている状況です。
今回のこども家庭庁が設立に伴い、役割として「強い司令塔機能」が強調されています。
こども家庭庁は内閣総理大臣の直属機関、内閣府の外局として位置付けられました。
それに伴いこども政策担当大臣を必置化しました。

大臣がいるといいことあるのですか?

大臣がいると勧告権を有することができます。
- 勧告権とは?
- 日本で行政機関やその長が、他の行政機関(あるいはその長)に対して意見を提出する権利。(引用:コトバンク)
今までの日本のこども政策の問題点として、問題が起きた時にどこに声を届ければいいのか?という事が非常に不明瞭でした。
幼稚園の問題は文部科学省、保育園の問題は厚生労働省、認定こども園の問題は内閣府…のように子ども政策について取り扱う省庁が違うというだけで多大な労力を要していたのです。

改善の検討会をするのにも、それぞれの省庁から担当が来ないとですから…ペースも悪そうですね。
しかし、こども家庭庁が新設されたことで、問題がこども家庭庁に集約され、こども家庭庁が勧告権を行使し、他の省庁を勧告権を使い、ガンガン動かしていく、そんな流れができるのです。

デジタル庁が新設された時も勧告権をガンガン使用し、判子レス、ペーパーレス化が進みました。

こども政策も良い方向に向かってガンガン変わって欲しいですね!!
体制は3つの部門から構成される。
こども家庭庁は3つの部門で構成されています。

企画立案・総合調整部門
子どもの政策を立案したり、各省庁や自治体と調整を行う部門です。
もう少し具体的に仕事の内容を書くと以下の通りになります。
- 企画立案・総合調整部門の職務内容
- ・こどもの視点・⼦育て当事者の視点に⽴った政策の企画⽴案・総合調整
・必要な⽀援を必要な⼈に届けるための情報発信や広報等
・ データ・統計を活⽤したエビデンスに基づく政策⽴案と実践、評価、改善<
子どもから意見を取り上げるために、どのような取り組みをおこなうかを考えたり、子どもの政策を考えたり、こども家庭庁の中枢を担う部門ですね。
生育部門
生育部門の職務内容は次の通りです。
- 生育部門の職務内容
- ・妊娠・出産の⽀援、⺟⼦保健、成育医療等
・就学前の全てのこどもの育ちの保障
・相談対応や情報提供の充実、全てのこどもの居場所づくり
・こどもの安全(性的被害の防⽌、事故防⽌、予防のための死亡検証
こちらは様々な困難を抱える家庭への支援が中心となる部門です。
支援部門
- 支援部門の職務内容
- ・様々な困難を抱えるこどもや家庭に対する年齢や制度の壁を克服した切れ⽬ない包括的⽀援
・社会的養護の充実及び⾃⽴⽀援
・こどもの貧困対策、ひとり親家庭の⽀援
・障害児⽀援

以前はこの分野まで厚生労働省が担当していたかと思うと…範囲が広すぎでしたね。
組織図が公開

2022年12月23日により詳細な組織図が公表されました。

だんだん組織の概要がハッキリしてきましたね!
規模は430人これって多いの少ないの?
設立計画では 規模は300人とされていました。

2022年の報道によると、こども家庭庁の職員数は300人態勢でおこなわれる予定です。
首相「こども家庭庁」発足に先立ち300人体制で取り組み強化を (NHK 2022年2月7日)

300人って多いのですか?少ないのですか?
こちらは令和3年度7月1日時点の各省庁の常勤職員数です。

(出典:e-Stat政府統計の総合窓口「一般職国家公務員在職状況統計表」より)

こうしてみると結構人数配置はバラバラなのですね。

業務内容にもよるんでしょうね。それでも300人はなかなかの規模です。
内閣府外局はその業務の特殊性から、人数配置もまばらになるのだと思います。
子ども家庭庁と同じ立ち位置の金融庁は1,543人、消費者庁は366人、個人情報保護委員会134人という構成ですので、300人はなかなか手厚い人員配置なのではないでしょうか。
大幅に人員増員され、430名体制で設立が決定(2022年12月)
首相の直轄機関で、政府の子供政策の司令塔機能を担う「こども家庭庁」が来年4月に430人規模で発足することが20日、分かった。厚生労働省子ども家庭局や内閣府の子供関連の事務部門から移管される約210人から大幅に増やす。
2022年12月に最終的な人数が確定しました。
当初の予定の300人より大幅に人員が増員され、430人態勢で設立されることが決まりました。

注目度があがっているのでしょうか。
こども家庭庁は取り組む政策が多岐に渡るので、人数の増員は嬉しいニュースですね。
今後のスケジュール…令和5年度に創設!
今後こども家庭庁は今後のスケジュールについて次のように公表しています。
令和5年度のできるだけ早い時期に創設。
「こどもに関する政策パッケージ」等に基づき、こども家庭庁の創設を待たずにできることから速やかに実施。
こどもに関する政策パッケージは内閣府のホームページで公表されてます。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate.html
「こどもに関する政策パッケージ」(リンクで直接PDFが開きます)
こども家庭庁の課題とは?
2023年の4月より実施される子ども家庭庁ですが、多くの課題に取り組んでいくことになります。
今回は以下の3つの課題について解説します。
- こども家庭庁の課題
- ・子どもコミッショナーは?
・幼保一元化はどうなる
・予算はどれだけ取れる?
①子どもコミッショナーの役割をどう果たすのか?

世界には子どもコミッショナーという制度が国家機関として作られています。

子どもコミッショナーってなんですか?
- こどもコミッショナーとは?
- 子どもの権利が守られているかを行政から独立した立場でモニターし、調査や韓国する権限を持つ機関のこと。(子ども基本法Webサイト「子どもコミッショナー/オンブズパーソンについて」より)
つまり、子どもの人権がちゃんと守られているかをチェックする第三者機関のことです。
子どもの人権がちゃんと守られているのか…政府から独立して監視する役割が必要になってきます。
さらに子どもコミッショナーは子どもの目線に立ち政策を改善の提案をしていきます。
子どもは人権侵害にあったときに、自分で救済を求めることが困難な立場です。
また、選挙権を持っていないため、子どもに関する政策を決める際にも意見表明をするのが難しいです。
そのような時に、支援を求める先に子どもコミッショナーという機関が存在するのです。
こども権利条約を批准すると、国連の子どもの権利委員会がちゃんと内容を遵守しているかチェックします。
子ども権利委員会は子どもコミッショナーのような政府から独立した機関の設立を推奨しています。

お目つけ役って感じですね!

ユニセフの調査によると、海外諸国は2012年時点で70カ国200以上の地域にこどもの子どもコミッショナーが実施されているそうです。

世界的にはスタンダードな機関なのですね!
子どもの独立した国家機関は1984年にノルウェーが一番初めに作りました。
そこから必要性が認知され、国連の子どもの権利委員会でも設置を推奨し、多くの国が2000年〜2010年の間ぐらいに設立しました。
子どもコミッショナーを導入することで、すでに成果がでている国があります。
フィンランドでは、児童養護施設にいる子どもや卒業した子どもの声を聞いたうえで、支援対象者の年齢を25歳まで引き上げるという提言をし、法改正を実現しました。
また、オーストラリアでも、政府が税と社会保障の改革をしたときに、コミッショナーが奨学金制度など子どもを持つ家庭に関わる社会保障制度の改善を提言して、いくつか達成しています。

日本はどうなるのですか?
今回は子どもコミッショナーの設立は見送られました。

恣意的に使われたり、暴走しかねない。誤った『子ども中心主義』になりかねない、との事です。
子ども家庭庁が勧告権を持っているから、それで十分ではないか、との声も上がったようです。
しかし、勧告権は強制力はありません。
子どもコミッショナーのような役割をこども家庭庁がどこまで果たせるのか?今後の動きに注目です。
②幼保一元化はどうなる?

子ども家庭庁の大きな役割として、子どもに関する縦割り行政をやめ、一元化する事が望まれていました。

縦割りってよく聞くけど、どういう状態?何が問題なんですか?
- 縦割り行政とは?
- 各省庁間の横の連絡・調整がほとんどなく,それぞれが縦のつながりだけで行われている日本の行政のありかたをいう。
こども政策の縦割り行政は以下のような弊害があり、問題視されてきました。
- 縦割り行政の弊害
- ・省庁間で重複した業務をおこなわれているケースがあり、効率が悪い。
・所管省庁が不明確な”谷間の問題”がある。
・省庁間の横の連携を取ることが難しい。
・保育制度が複雑化する傾向がある。
縦割り行政自体はデメリットではありません。
縦割りというのは組織では当たり前の形態ですし、迅速に業務が進むメリットもあります。
しかし、子どもの政策においては、各省庁が別々の取り組みをしており、縦割りにすらなっていないのが問題であると言えます。
谷間の問題、横の連携の難しさ…
例えば、子ども家庭庁の設立に当初より携わる自民党の山田太郎議員は次のように語りました。
「子どもの性虐待の問題を指摘された時に、文科省、厚労省、警視庁の担当を呼び出して聞くと、『ウチじゃない、ウチじゃない』と言い出して、結局、当時性虐待に関して日本の担当部署がない、ということがわかった。」((2021年5月テレ東Biz『なぜ今こども庁?キーパーソンに聞く』インタビューより)

これが谷間の問題…ということですね。
他にも、保育制度の複雑化や連携不足など良い例です。
保育制度が複雑化する傾向がある。

- 幼稚園(文部科学省)
- 認可保育園(厚生労働省)
- 認定こども園(内閣府)
- 認証保育所(東京都)
- 無認可保育所<
東京都だけで言っても、未就学児を預ける施設の種類は以下の通りです。
さらにここから、企業主導型保育所、家庭的保育事業…など細かく分かれていきます。
同じ子どもを預けるのに、保護者はどれを選ぶべきなのか、どう違うのか、見極めるのは困難です。
また、それぞれの省庁の予算が決まっているので、自治体が保育園の設置の計画を立てる際に非常に調整が難しくなります。
こうした面からも、幼保一元化はずっと前より実現の試みがされてきました。
今回、こども家庭庁の設立にあたり、この幼保一元化がいよいよ実現する!と期待感が高まったのです。
しかし、今回は見送られました…。
しかし、いざフタを空けてみると、このようになりました。


厚労省は移管で…文科省は連携?
子ども関連の全ての管轄がこども家庭庁になるのではなく、厚労省(保育園)と内閣府(子ども園)は移管になり、幼稚園は「連携」となったのです。

なんでこうなってしまったのですか?<

幼保一元化に労力を費やして、他の政策が回らなくなったら意味がないでしょ!という意見らしいです…。
しかし、縦割り行政の問題に関して何も改善がなかったわけではありません。
今後の施策の方向性として以下のことが明示されています。
通知等は、原則として、こども家庭庁と文部科学省の連で発出する(こども家庭庁の創設時期にかかわらずできるだけ早期に実施。)。 園に関する調査については、内の共通化に向けた検討を開始し、令和5年度の実施を目指す。なお、令和4年度からは、翌年度の調査の年間予定を地方自治体に対して周知する。園を対象とする施設整備事業・災害復旧事業については、原則として、こども家庭庁へ移管し、一本化する。その他の各種補助金等について、調査・整理を行い、対応方針を決定する。(内閣官房:「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」より)
これまでは保育園は「厚生労働省」、幼稚園は「文科省」のように発信元が違っていました。 その部分を「こども家庭庁」及び「文部科学省」からの発信に統一するようです。

縦割りが改善されてる部分もあるのですね。

個人的な見では、このタイミングでやらなかったら、いつやるんだ…!という想いが強いです。
成り立ちでも解説した通り、こども家庭庁は国連こどもの権利委員会より指摘を受け設立した背景があります。
そのため虐待、いじめ、差別など緊急性の高いものが優先となります。
幼保一元化はシステムの調整が難しく、そこに労力を割いて、こども家庭庁の設立が遅くなるよりも、まずは子ども家庭庁の設立や、緊急的な案件を優先させましょうという方向になったのです。
今回はこども家庭庁の設立や優先順位の関係で後回しになってしまった、幼保一元化。
幼保一元化について、子ども家庭庁がどのように政策を考えていくのか、注目していきましょう。
③予算の確保
日本の子育て関連の予算は低い。

省庁の設立で気になるのは予算がどれくらい確保できるのか?という点です。
2022年9月現在ではこども家庭庁は概算要求4.7兆円を要求しています。
さらに岸田総理はここから倍増を目指すと報道で発言しているようです。

お金をたくさん回してくれるのですね!

これまでが低かったからですね。
日本の子育て支援に関する予算ですが、諸外国と比較すると決して多くありません。
国内総生産(GDP)比1.65%(2018年)。スウェーデンの3.42%(17年度)や英国の3.19%(同)の半分程度となっています。

(図表:東洋経済2022年7月9日『子育て世帯への支援は「未婚・子なし」にも有益だ』記事より抜粋)
予算がなければ当然、優秀な人材を集める事もできませんし、省庁も機能しません。
安定的に財源から予算を確保することが、こども家庭庁の課題であると言えます。
予算は4.8兆円が確定(2022年12月)
子ども、若者、子育て支援策を一元化して担当するこども家庭庁が来年4月に発足しますが、政府はその来年度予算案4兆8000億円あまりを決定しました。
予算は4兆8000億円で確定しました。

要望通りの予算は確保できたのですね!
2023年の当初予算が確定した際は、防衛費との割合が問題視され、悲観的な報道がされていました。
2023年度当初予算案では、防衛、脱炭素と並んで岸田文雄首相が「3本柱」に掲げる子ども政策関連として、同年4月発足のこども家庭庁の予算約4兆8千億円が計上された。子ども関連予算は22年度当初比で1200億円増と首相が唱える倍増には遠く、財源の議論も23年度以降に先送り。財源をかき集め、5年間で総額43兆円を「確約」された防衛費との差が浮き彫りとなった。少子化が急速に進む中、与党内には首相の政策の優先順位を疑問視する声もある。
しかし、こども家庭庁の予算要求分はしっかりと財源を確保しているうえに、岸田総理はこれからの予算も増やしていく発言をしています。
首相は「異次元の少子化対策」を掲げ、子ども・子育て関連予算の倍増を目指す意向を示してきた。4月1日のこども家庭庁発足を経て、検討を本格化させ、6月にまとめる経済財政運営の基本指針「骨太の方針」に、倍増に向けた全体像を盛り込みたい考えだ。
個人的には、悲観的にならず、これからどんどん子ども関連の予算が増えていく事を願っています。
私たちはどう変わる?

保育園への影響
子ども家庭庁ができることで、私たちの環境はどう変わるのでしょうか?
結論を言うとすぐには変わらないと思います。
厚生労働省から移管という形になるからです。
しかし、今後は変わっていく可能性も十分に考えられます。

変化に対応できる組織作りが大切ですね。
こども家庭庁の情報へアクセスしよう!
内閣府のホームページではこども家庭庁の様々な情報が公開

内閣府ではこども家庭庁の設置準備がすすめられ、様々な情報が公開されています。
現在はこども家庭庁やこども政策の今後を決める「こども大綱」の作成を有識者で話し合われています。
最新の子どもに関する調査研究なども無料で見ることができますので、研修で学べるような内容もみることができます。

議事録などは読みにくいですが、政策が決まる流れを知ると本質が見えてきますよ。
またTwitterをしている人は、「こども家庭庁の設置準備室」というアカウントが作られ、様々な情報をリアルタイムでツイートしています。
こども家庭庁の最新情報をキャッチしたい方は、こちらもフォローすると良いでしょう。

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こども家庭庁設立準備室

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子ども家庭庁まとめ
6つの問題
- 差別の禁止
- 子どもの意見の尊重
- 体罰
- 家庭と離れて住むことを余儀なくされる子ども
- リプロダクティブヘルス及び精神保健
- 罪を犯した子ども
①+②の要因が重なり、子どもを包括的に支援する「こども家庭庁」が設立される。
・当初は名前が「こども家庭庁」だった。勉強会の中で家庭で健やかに育てない子どもへの配慮から、「こども庁」に名称変わる。しかし、自民党保守派の「伝統的家族観」が崩れる危険性がある、との主張が通り、「こども家庭庁」へ再度変更になる。
- こども家庭庁は「内閣府外局」に位置付けられている。
- こども家庭庁の理念は6つ
- こどもの視点、⼦育て当事者の視点に⽴った政策⽴案
- 全てのこどもの健やかな成⻑、Well‐beingの向上
- 誰⼀⼈取り残さず、抜け落ちることのない⽀援
- こどもや家庭が抱える様々な複合する課題に対し、制度や組織による縦割りの壁、年齢の壁を克服した切れ⽬ない包括的な⽀援
- 待ちの⽀援から、予防的な関わりを強化するとともに、必要なこども・家庭に⽀援が確実に届くようプッシュ型⽀援、アウトリーチ型⽀援に転換
- データ・統計を活⽤したエビデンスに基づく政策⽴案、PDCAサイクル(評価・改善)
- こども家庭庁の目的は3つ
- 子どもが自立した個人として等しく健やかに成長する社会の実現を目指す。
- 子どもと家庭の福祉の増進・保健の向上等の支援。
- 子どもの権利利益を擁護することが任務。
- こども家庭庁の基本的な姿勢
- 子どもの視点、子育て当事者の視点に応じて政策に反映させること。
- 地方自治体との連携を強化する。
- NPOをはじめとする積極的な対話・連携・協働をし、ネットワークを強化していく。
- 強い司令塔機能としての役割、大臣が勧告権を行使し、各省庁へ働きかけられる。
- 体制⇒3つの部門に分かれる。
- 企画立案・総合調整部門…こどもの意見を聴き政策を考える
- 生育部門…こどもの育ちをサポート
- 支援部門…支援が必要な子どものサポート
- 規模⇒300人の職員を配置
- 今後のスケジュール⇒令和5年のできるだけ早い時期に創設、「こどもに関する政策パッケージ」等に基づき、こども家庭庁の創設を待たずにできることから速やかに実施
- こどもコミッショナーの設立
⇒子どもの人権が守られているかチェックする、政府から独立した第三者機関。
今回は自民党保守派の意見により、設立が見送られる。こども家庭庁がどれだけ
子どもコミッショナーの役割を果たせるかどうか。 - 幼保一元化
⇒縦割り行政の弊害により、省庁、自治体、関連団体などの連携が難しい。
今回は子ども家庭庁を設立すること、緊急性の高い事案から取り組むことが優先され見送ら
れた。今後も同じ体制で進むのか、こども家庭庁にかかっている。 - 予算の確保
⇒2022年9月現在では4.7兆円の概算要求をしている。安定的に予算が確保できるかどうか。